Act.7 予想はいつも我を裏切る


「坂下、お前、本当に藤枝と付き合ってるんだな」

屋上で、遠宮と昼食をとっていた忍は、何とも言えない表情で返事をした。

「一方的にな。
だが絶対に俺に惚れるよ」

「相変わらず大した自信だな?
今迄の体験がそうだからと言って、上手い具合にいくとは思わないが
特に藤枝は、お前が付き合っていた女子達とは勝手が違う。
解るだろう?」

「ああ
だが理屈ではないんだ
俺は…
彼女の全てが欲しい」

「坂下…?」

これが本当に、あの坂下なのか?

今迄の坂下は、恋愛に関していつも飄々と立ち回っていた。
特にこいつは女子に関して、本当の意味で興味等持っていなかったはずだ。


一線を引いている…。

これが今迄感じていた坂下の恋愛に関しての感想だ。

「藤枝に関しては本気なのか?」

答えは無かった。

だが忍の表情が全てを物語っていた。

これほど柔らかい表情を、遠宮は初めて見たのであった…。


放課後。

「藤枝さん。
ちょっと、お話があるのだけどいいかしら?」

(キター!!!!!
や、やっぱり来た来た、坂下忍親衛隊の女子達!
なんて予想を裏切らない展開なの
いや〜!!!!!)

「え、何か御用?」

「あるから言ってるのでしょう?
さあ、付き合って!」

「私に貴女方と付き合って話し合う事なんて、ないんだけど?」

「私達にはあるのよ!」

「何ですか?
じゃあ、ここで言ったらどうなの?」

冷ややかに見つめる夏流に一瞬怯んだが、自分たちの主張を伝えないといけないと思い、彼女達は言い放った。

「坂下君に近づくのはやめて。」

「え?
何言ってるの?
私が好きでつきまとってると思うの?」

「そうよ!
そうでは無かったら、坂下君があんたと登校する訳無いでしょう?
あんたみたいな地味な女に!」

好き勝手言う女子達に怒りを憶えた夏流は、女子達をねめつけた。

「何か言う事は無いの?」

「バカらしくって、話になら無いわ
これ以上、話しても時間の無駄なんだけど
帰るわ」

「ちょっと、待ちなさいよ!」


「…これ以上話す事は無いって、夏流は言ってるだろう?」

いつも間にか迎えにきていた忍の言葉に、耳を疑う夏流と取り巻き達。

(い、いま、なんて言った?この人は!)

「俺の彼女にこれ以上何か言ったら、容赦しないから」

普段と違う雰囲気の忍に恐れを巻く、女子達。

「嘘でしょう、坂下君
こんな地味な女、坂下君にふさわしく無いわ」

「勝手に決めないでくれるか?
ふさわしいかどうかは俺が決める事だ。
夏流は俺の大切な人だよ」

堂々と交際宣言してる忍に、ただただ言葉を失う取り巻き達と夏流。

(私の平穏な日常は一体どうなる訳?
もおお、坂下忍のバカヤロー!
この疫病神!)

言葉を失い項垂れる夏流の手を引き、立ち去る忍。

唖然としながら、2人の様子を伺う女子とクラスメイト達。

「ねえ、これ以上私に関わらないでよ
どうして、私なのよ…
もっと、他にいるでしょう?
何度も言ってるけど、私は貴方なんて好きではないの」

力なく囁く様に忍に話しかける夏流に、忍は静かに答えた。

「俺は君が好きなんだ、夏流」

これ以上話しても無駄な事だと思った夏流は、その後何も話さなかった。




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