Act.7 甘い余韻(R15) 目覚めた時、側に温かいぬくもりがある。 それが夢だとつい思い、頬にそっと触れると手に彼の熱が灯る。 「こんな風に寝ている姿を見るの、初めてかも…。 ホント、男の人なのに睫毛は長いし、肌もきめが細かくて綺麗。 比較するのもバカらしいけど、でも落ち込むな…」 ふうう、と溜息をついてると、ふと自分たちがお互い何も纏っていない事に気付き、夏流は慌てて床に落ちているバスローブを拾おうとして動き出した。 その動きを制するかの如く腕を掴まれ、強く忍に抱きしめられる。 「まだ起きるには随分早いと思うけど」と、少し眠たげに言葉をかける。 密着する肌に熱が伝わり夏流は、忍に離す様に促すが、もっと自分の元に抱き込むかの様に忍は、更に身体を密着させた。 重なる体が今朝迄行われた濃密な行為を、嫌な程思いださせる。 頬が赤くなる事を隠せない夏流を見つめる瞳は欲情に濡れていて…。 忍が自分を求めているのを感じた夏流は慌てて忍の動きにストップをかけた。 「も、もうこれ以上はやめて忍さん。 私の体力にも限界があるのだから…! お願い、忍さん…。」 涙声で哀願する夏流に忍は微笑みながら、「まだ大丈夫」と悪魔の如く耳元に囁く。 「忍さん!」と嫌々しながら頭を振る夏流の動きが、忍によって甘い声を上げ官能の波に沈むのは、然程時間を要する事ではなかった…。 「夏流、起きて。」 カーテンから光が差し込み、部屋の中を温かい空気で満たしている。 「今日はいい天気なんだ…」と、ぼんやりする思考の中で夏流は考えていた。 「起きて窓を開けて空気を入れ替えて、洗濯して、掃除をしないと。」と考えつつ、今自分がいる場所を思いだした夏流は、 起きようと身体を動かすが思う様に動けない。 手を握ろうとしても力が入らない程、体が重く感じる夏流は、意識を失うまで忍に深く求められていた事に気付いた。 「忍さんのバカ…」と一言呟く事が精一杯な状況だ。 そんな夏流の様子を側で見て苦笑する忍。 「今日一日、のんびりと過ごしたらいい。 朝食は作ってるから、何時でも食べれるけど、ここまで持ってこようか?」とくすくす笑いながら話す。 忍の余裕な態度に、「先にお風呂に入りたいから後で!」と反抗する夏流に声を立てて笑う。 可笑しそうに笑う忍の態度に、ただただ憤慨するばかりだ。 身体に力を入れ、無言でバスルームに行こうとする夏流に、流石に笑いすぎたと思った忍は、夏流の身体を抱き上げバスルームへと向った。 お湯が張ったバスタブには、ほんのりラベンダーの薫りがする。 リラックス作用を考え忍が用意したのだろうかと思うと、少し機嫌が和らいだ。 こめかみにキスをして「俺も一緒に入りたいのだけど」と笑いながら言う忍の言葉に夏流は本気で怒りだした。 夏流の態度を見て破顔した忍は「ゆっくり」と一言いい、バスルームを後にした。 お湯に浸かりながら、所々、くっきりと残っている所有の跡に夏流は声を上げて叫んだ。 「もおおお、忍さん! 何処迄付けているの これは…! 更衣室で着替える時、何言われるか、知って付けたとしか思えない。 この確信犯! ファンデで隠そうにしても、こんな場所迄手が届かないじゃない…。 いやああああ!」 羞恥心に全身が赤くなるのを抑えられない夏流は、跡を見つめながら、目覚める迄行われていた行為を思いだし、更に赤くなった。 忍の掠れる声を、吐息を体中に感じ、全ての熱が夏流を包み、甘い声をあげるしか出来なかったあの濃密な行為に、 夏流は自分が忍に深く求められ、愛されている事を実感した。 途中、嬉しさの余り泣いてると、心配し自分の瞳を覗き込む忍の目の艶やかさを思いだし、体中が痺れ疼くのを感じた夏流は、思いっきりかぶりを振った。 「もう、私ったら…」と更に頬を赤くする事しか出来ない。 女としての悦びを全身に受け止めた夏流は幸せの余韻に浸っていた…。 |