Act.2 「純愛」と言う名の… パパ、更科侑一は、幼い頃から幼なじみであるママを心から愛していた。 2人が出会ったのがパパが6歳、ママが10歳であった。 明るくて優しいママにパパは一目ボレしたそうだが、パパの実家である更科家と、ママの実家と言える宮野家は とても仲が悪かったらしい。 大学時代、パパとママの父親は出会ったのだが、ある人物の存在がきっかけとなり、2人の仲は険悪となった…。 そしてそれに更に拍車をかけるのが、後に出会う「坂下忍」と言う、これまた、とんでもなく美しくて、 そして訳の分からない性格を持った美少年なのだが…。 これはまた、後ほど語る事になるので今は控えたい。 ママ、宮野菜穂は宮野家の実の娘ではない…。 ママの実の両親は10歳のとき、ママが入院している病院に向う途中、事故に巻き込まれて亡くなった…。 その後ママは、母親の姉の嫁ぎ先である宮野家に引き取られた。 ママは幼い頃から心臓を患っていて、成人する迄生きていられないと医師に宣言されていた。 パパは何度も入退院を繰り返すママをずっと支え、見守っていた。 最初、パパの事を実の弟の様に可愛がっていたママだったけど、それが何時、恋に変わったのかは本人しか解らない。 ただ2人とも真剣に愛し合っていた。 実際、ママにとってパパが初めてであり、そして最後の人だったから…。 「菜穂は19歳の時に亡くなったんだ。 僕は彼女が亡くなる一年前から、彼女に会う事が出来なかった。 彼女にずっと拒まれていたから…。 その理由が春菜の存在だと知った時、僕はとても後悔したよ。 いや、後悔という言葉では言い表わせない程、自分の考えの無さを恨んだよ。 菜穂は…、僕の将来を考えて身を引いたんだ。 そして春菜と言う命が宿った事を宮野家の義母のみに伝えて、県外の診療所に転医し、出産して…、一ヶ月後に息を引き取った。 菜穂が亡くなった後、義母は春菜の存在を僕と宮野家に隠す為に、君を水口家に預けた。 水口家は代々、菜穂の母親の実家に仕えていたから。 そして春菜が成人する迄、ずっと養育する事になっていたのだが…。」 「…」 「菜穂の義母は、春菜が成人したら僕に春菜の事を告げようと考えていたらしい。 僕は息子の孝治とは仲がいいから、宮野家には幼い頃から遊びに行っていたので、菜穂の義母には気に入られていた。 僕たちの恋愛を陰ながら応援してくれてはいたが、菜穂の思いを尊重したのだろうねえ…。」 「あの…、更科さん」 「…更科さんて他人行儀な。 パパと呼んで欲しい。」 侑一の恥ずかしい言葉に春菜はすぐに、言葉を続けた。 「それは無理でしょう! だって、更科さん。 貴方、幾つなんですか? どう見ても20代後半しか見えないんですけど。」 春菜の言葉に、少し困惑気味に笑った。 「若く言って貰えるのはとても嬉しいけど、これでも31歳なんだ…」 少し照れてる様に見えるのは気のせいだろうか?と春菜は一瞬感じ取ったが、侑一の年齢を聞いて、目眩を起こしそうになった。 「え? さ、31歳…。 じゃあ、14歳で…?」 ふふふ、と微笑みながら春菜を見つめる。 「そうなるよね。 でも、愛に年齢は関係ないよ。」 頬に朱が刺しているのは見なかったにしよう…、と春菜は心の中で呟いた。 (な、何が愛に年齢は関係ないって。 大有りよ。 まさに純愛と言う名の、若さ故の暴走としか思えない…。 確かにパパとママの愛の深さは凄いと思う。 話を聞いていて涙が出たわ。 それに多分、ずっとママ一筋であったのだろうと思うけど、だけど…! い、いや、31歳のパパなんて! 私、恥ずかしくって紹介出来ない…。 せいぜい、年の離れた兄妹としか見られないわよ! お、落ち着こう、春菜。 これは悪い夢。 そ、そうよ。 祖父母が亡くなって、思考回路が正常ではないの。 だから、今、ある出来事も、私の想像が作った幻なのよ。 もう、上手く出来ている。 私って、こんなに少女趣味だったのかな? いや、もっと現実を見つめていたハズ…! うわああん、いやあああああ!) 発狂寸前になっている春菜と、そして過去の純愛を語った事で己に陶酔している父親、侑一31歳…。 お互いがお互いの世界を堪能している間に、2人が乗っている車は目的地である更科家へと着いたのであった…。 |