Act.1 31歳のパパと17歳の私(娘)





私には亡くなった祖父母しか身内がいないと信じ切っていた。

そう、祖父母の葬式を迎える迄は…。

私、水口春菜、17歳。

今日、私は天涯孤独となった。

と、信じて疑ってなかった…。

祖父母の火葬を終え、これから自分の人生をどう考えてはいいのか、心身、どん底迄陥っていた私には考えつかなかった。

祖父母達の残してくれた家と預貯金、そして生命保険の保険金で、何とか大学に通い生活を営む事が出来そうなのを
弁護士であり、祖父の友人であった名越さんが教えてくれた。

「財産管理は自分が任されているから春菜ちゃんは自分の幸せを考えていきなさい」、と励ましてくれる言葉に涙がじんわりと浮かび、
思わず泣いてしまった。

この時、自分が天涯孤独になった事を改めて思い知ったのであった、が…。

それが誤りであった事を私は直ぐさま体験するのであった。



納骨を済ませ帰宅しようと墓地を離れる私を呼びかける声に、私は一瞬、振り返った。

そして私は一瞬、その場所から離れる事が出来なかった。

自分を呼びかけた背の高いハンサムな男性…、と言うよりも綺麗な顔をした美青年と喩えた方がいいのだろうか?

身長が155センチの私にとって彼はとても背が高く見えた。

後で知ったが178センチしか無くて結構、コンプレックスを持っているんだ…、と苦笑する姿を見る様になるのだが。

それはさて置き、目の覚める様なハンサムが自分に近づき、そして私はその男性に思いっきり抱きしめられていた。

余りの出来事に私の思考は停止し、それ以上の機能を果たす事が出来なった。

硬直した私の耳元で彼は涙を流しながら、衝撃的な言葉を私に囁いた。

その言葉を聞いた途端、出た言葉が「そんな、あり得ない…」のただ一言であった。

そう、彼は私を抱きしめながら、こう言った。

「僕が君の父親だよ、春菜…」

「え…」

「今日から君は僕と一緒に暮らすんだ。」

「…」

私、水口春菜。

改めて言うけど、17歳、高校二年生。

そして自分を抱きしめてるのが、「六家」と呼ばれる更科グループの社長で更科侑一。

31歳、そして独身…。



それが父親である更科侑一との出会いであった…。





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