Act.9  六家の集い その2



輝の会話を端から聞いていた豪の心境は微妙だった。

「輝、お、お前…」

言葉を上手く扱う事が出来ない豪に、輝はくつくつと笑う。

「お前といると楽しいよ、豪!

お前が親友で、本当に良かったと心から思うよ。」

輝の揶揄を込めた言葉に豪は肩を落とした。

「…その言葉、本心ではないな。

お前も3魔女と一緒か…」

はああ、と深いため息を零す豪に思わず苦笑する。

「親友の言葉を素直に受け取れよ。」

「…時と場合による。

今の言葉は俺をからかっているとしか取れん。

まあ、俺は何処迄もおもちゃなんだよな…。

3魔女だけではなく、あいつらも、いつも「六家の集い」で俺の事を肴にしてその場を楽しんでいるし。

本当に性格がいい…」

「まあ、あいつらも色々大変だからな。

鬱憤を晴らすのに、お前の存在は必要なんだよ。」

「…それは褒め言葉と取るべきであろうか?」

「ふふふ、まあ、そういう事だ。」

「…」

「…で、俺は今から朱美に会っても構わないだろうか?

義兄さん。」

輝の言葉に目を伏せ、深く息を吐いた。

「…駄目だと言っても聞かない癖に…。

それに朱美も大人だ。

俺が関与するべき事でも無いだろう?」

「それを本心ととってもいいのか?」

「男女間の事に俺が何を言えと?

俺は親父と違って、そういう事には寛容だよ。」

「…」

「それに朱美を幸せにするんだろう?輝。

なら、朱美の心を涼司叔父さんから奪ってくれ。

そうでは無いと朱美は一生、呪縛から解放されない。」

「「六家ガールズ」の掟か?」

「ああ。

バカバカしいとか言えないが、あいつら、忍が結婚する迄、涼司叔父さんに操を立てると言ってるらしい。

そしてもっとバカらしい事に、忍に息子が出来たら、その息子に人生を捧げると言っている。

あいつらが何を考えているのか、俺にはさっぱり解らん。」

豪のほとほと呆れた様子に微笑みながら、輝は言葉を返した。

「…俺は志穂達の気持ちが解るよ。」

意外な輝の言葉に豪は、一瞬言葉を失った。

「それ程、涼司さんは志穂達にとって「特別」だと言う事だよ。

人生をかける程、心を奪われる存在。」

輝の今迄にない優しい表情に、豪はふっと表情を緩めた。

「…そしてお前は朱美に心を奪われたんだな。

全く…。

厄介な女に捕われたな、輝。」

「…いや、最高にラッキーだと思っている。

人生に於いて、それほど迄の存在に巡り会えたんだから。

俺は幸せだよ、豪。」

「…」

「まあ、前途多難な方がいいさ。

朱美との恋愛に平穏と言う言葉は似合わないし。」

「まあ、確かにな。」

「それに、3魔女の一人だし。」

輝の言葉に思わず爆笑する。

くつくつと笑う豪の様子に輝は目を細め笑った。

(そうさ。

朱美との恋愛に平穏は許されない。

それに許して欲しいとも思わない。

何故なら…。

それが俺が行った罪の代償だから、な…)



ある出来事が心の中に鮮明に浮かぶ。

自分の心を一生苛む出来事が…。

かぶりを振り、輝はその残像を消し去った。



心の中に暗い感情を抱きながら…。




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