Act.26  恋愛狂想曲 その12



(な、何、またたわけた事を言っているの孝治さん!
もおおおおお、来るべきではなかった「六家の集い」)

心の叫びがつい、ぽろりと出た私は隣にいる孝治さんに突っかかっていた。

「な、何、言っているの孝治さん!
こ、こんな所で何を…」

わなわな震えながら叫ぶ私ににっこり微笑みながら孝治さんが、こう付け加えた。

「春菜も嬉しいだろう?
こんないい男の妻になるんだから」

目眩を起こしそうになるくらいのフェロモンだだ漏れ…。

や、やめてよこんな時に!と、実力行使している孝治さんの魅力に購う事等…!

いいえ!

私は坂下君が好きなの!

だから…!

「孝治さん…。
私が坂下君の事を好きなのは、ご存知ですよね」

声を震わせながら話す私に、孝治さんはあくまでもマイペースだ。
いや、大人の余裕?

ううん、完全に私の想い等、スルーしている…。

「ああ、忍君に勝手に横恋慕?
はははは、忍君は春菜の手には負えないって。
諦めて俺の妻になれ。

その方が春菜の幸せにも繋がる。

俺は…、忍君よりも遥かに男としての魅力を充分に備えていると思うが…。
違うか?」

身体を屈ませ耳元で囁かれ。
体中の力が奪われた感覚に、私は身体を支える事が出来なくなった。

そんな私の腰の手を回し、孝治さんがパパに伝えた。

「侑一。
春菜をちょっと、連れて行きたい所がある…。
家にはちゃんと届けるから、心配するな。

もう、今日の集いは終わっても構わないんだろう?
お前の目的も果たしたし、なあ、侑一。」

急な孝治さんの言葉に、一瞬、パパが声を荒げる。
余裕の無いパパの様子に、孝治さんがくつくつと笑った。

「心配するな。
まだ、手は出さない。
完全に気持ちを手に入れる迄は、な」

ふふん、と私を横目で見つめる孝治さんの艶やかな光を帯びた目をマトモに受ける事が出来ない。

「墜落するのに、そう時間はかからないがね」とウィンクしながらパパに言う孝治さんにパパが、冷たい空気を纏いながら孝治さんを睨んだ。

「勝手な事はさせない!
春菜の気持ちを悲しませる事は…」

「勿論、春菜の気持ちを尊重しての事さ。
それに…。

春菜は俺の妻になる為に生まれたのだから…」

ふと、微笑む孝治さんに一瞬、寂しそうな表情が浮かんだ。
気のせいだろうか?とクラクラする思考を持ちながら、2人の会話を静観する。

呆気にとられてる豪さんを始めとした六家の方々を見つめて…、変にかれらのこういう顔を見つめる事が出来るのも私だけなんだ…、と他人行儀に考えていた。

「孝治…。
確かに菜穂は孝治の婚約者だった。
だが、菜穂は僕を選んだ。
その身代わりで、春菜を妻にするのは…、僕は許さない。
春菜は春菜であって、菜穂ではないんだから…」

パパの言葉に私は一瞬、目を見開きパパを見つめた。

パパもそう思っている。
孝治さんの事を…。

(確かにそうだわ…。
14歳も年下の女子高生に31歳の大人が本気になる訳…)

そう考えを巡らせていると、孝治さんがパパに言った。

何時もと違う真剣な口調で…。

「お前、俺の想いに失礼だと思わないか、その言葉は。
それに、春菜に対しても失礼だぞ。
ナホちゃんと春菜は親子であって姿はよく似ている。
だが、完全に人格が違う個別な人間だ。

確かにナホちゃんの娘だから惹かれた言うのは、認めよう。
そうでは無かったら出会う事も無かった。

だが、俺が惚れたのは春菜の心根であり、生き方だ…。
今迄の春菜を見つめて好きになった。

妻に迎えたいと思った…。

17年間、俺はずっと春菜を見つめていた…。」

「え…」

孝治さんの衝撃的な言葉に思考が真っ白になった。

「孝治、お前、ずっと春菜の存在を知っていたのか…?」

パパの声が震える。

「…そうと言ったら?」

「どうして僕に伝えなかった…」

怒りを露にするパパに、孝治さんが静かにこう言う…。

「それがナホちゃんの願いだったからだ。」

「菜穂の…」

「その事はまた話す。」

「…」

「行くぞ、春菜」

腰を支えながら、外に出る事を促す孝治さんの行動を私はマトモに動かない思考で受け入れていた。

(た、孝治さんが本当に私の事を本気で…?
う、うそ…?
それに私の存在をずっと知っていた…!
ずっと、見守っていたんだ)

ちらりと孝治さんの横顔を見つめる。

きりりとした意思の強い、エネルギッシュで男らしく、そしてとてもハンサムで。

前向きで強引だけど、だけど…。

人の気持ちに敏感で、それに対してさり気ない優しさに溢れていて…。

「どうかしたのか?春菜」

急に声をかけられてどきりとする。

胸が高まる。

ドキドキと心臓の音がなって、抑える事が出来なく私は…。

自分の頬が今迄に無い位、上気している事を感じていた。



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